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東京地方裁判所 昭和34年(ワ)148号 判決

原告 七条兼三

被告 中外証券株式会社 外一名

主文

被告両名は原告に対し、連帯して別紙目録記載の株券の引渡をせよ。

右株券引渡の執行が不能となつたときは、被告両名は原告に対し、連帯してその引渡不能な部分につき別紙目録記載の価格によつて算出した金員の支払をせよ。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は被告両名の連帯負担とする。

本判決は原告勝訴の部分に限り仮りに執行することができる。

事実

一、請求の趣旨

主文第一、二項及び第四項同旨の判決と、「第二項の金員に対する昭和三四年一〇月一三日より完済に至るまでの年六分の割合による金員の支払をせよ。」との判決及び仮執行の宣言を求める。

二、請求の原因

(一)  原告は昭和三三年一〇月一一日被告中外証券株式会社に、同種同量のものを返還する約束で、別紙目録記載の株式を貸与した。

(二)  被告石原は右貸与の日に、被告会社の右の返還債務について連帯保証をした。

(三)  よつて、原告は被告両名に対し本件株式の株券の引渡を求めもし引渡の強制執行が不能となつたときは、不能な部分につき履行に代る損害賠償として、右株式の本件口頭弁論終結の日である昭和三四年一〇月一二日当時の価格(別紙目録記載のとおり)によつて算出した金員と、これに対する本件口頭弁論終結の日の翌日より完済に至るまでの商法所定の年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

三、被告の答弁及び抗弁

(一)  答弁

請求の趣旨に対して、請求棄却の判決を求める。

請求の原因に対して、(一)及び(二)の事実は全部認める。(三)の事実中、本件株式の本件口頭弁論終結の日当時の価格が原告主張のとおりであることは認める。

(二)  抗弁

被告会社と原告の代理人との間において、昭和三四年二月初め頃本件株式の返還債務の内容を次のとおり変更する更改契約が成立した。

(イ)  債務の内容 本件株式の返還債務を、その株式の昭和三三年一〇月二七日当時における価格に基いて算出した金銭債務に変更する。

(ロ)  弁済期 弁済期はすでに到来している。

四、抗弁の認否

抗弁事実は全部否認する。

五、証拠関係

(一)  原告 甲第一、二号証及び第三号証の一乃至三を提出した。

(二)  被告 証人布川亮一の尋問を求めた。

(三)  書証の認否 甲号証の成立は全部認める。

理由

一、原告がその主張の日に、同種同量のものを返す約束で被告会社へ本件株式を貸与したこと、及び被告石原が右の返還債務について連帯保証をしたことは当事者間に争がない。

してみると、被告両名は、その主張する抗弁が認められない限り、原告に対して本件株式を返還する義務がある。

二、そこで被告の更改契約成立の抗弁について判断するに、証人布川の証言によつてもその成立を認めるに足る心証を生ぜず、その他の全証拠を精査してもこれを認定するに足るものが全くない。

よつて原告の本件株式の返還を求める請求は正当である。

三、なお、本件株式の口頭弁論終結当時の価格が原告主張のとおりであることは、当事者間に争がないのであるから、右株式の株券の引渡を求め、その引渡につき強制執行が不能となつたときは、不能な部分について履行に代る損害賠償として右株式の口頭弁論終結当時の価格に基いて算出した金員の支払を求める原告の請求も正当である。

四、原告はさらに、右金員に対し本件口頭弁論終結の日の翌日(昭和三四年一〇月一三日)より完済に至るまで年六分の割合による遅延損害金の支払を求めているが、遅延損害金は右の金員の履行期到来後原告の催告により遅滞に附せられた後でなければこれを求めることができないものであるから、この点に関する原告の請求は失当である。

五、以上判断したとおり原告の請求は填補賠償債務に対する遅延損害金の支払を求める部分を除き、他はすべて正当であるからこれを認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九二条第九三条第一項を、仮執行の宣言について同法第一九六条第一項を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 長谷部茂吉 上野宏 中野辰二)

目録〈省略〉

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